エピソード2
“さくら”の遺伝疾患と交配断念について。
そして始まった“KOO”“アイル”の物語




3頭のボーダーコリーとの出会い

私たち家族は5年半前にボーダーコリーの
“さくら”を迎え入れました。ボーダーコリーの出会いは、この“さくら”から全て始まりました。彼女は私たち家族に、ボーダーコリーと過ごす楽しさ、そして素晴らしさを教えてくれました。

そしてその“さくら”が3歳の時に、ボーダーコリーの多頭飼いが夢であった我が家に、“KOO”“アイル”が我が家のファミリーになることになりました。

私は以前からオスのボーダーコリーへの憧れがありました。5年半前に“さくら”を迎え入れる時はオスのボーダーコリーが希望でした。『飼うなら絶対にオス!』という気持ちがいっぱいでした。男らしさのある、力強いオスに魅力を感じていました。でもボーダーコリーは育て方や訓練が容易ではなく、特にオスはボーダーコリーらしさが強いため、『人と犬』の信頼関係がしっかりしていないと、その生活が大変な事になりそうと感じました。また育てきれなかった実例は沢山あり、途中で他の方に譲るなどの情報もありました。初めてボーダーコリーを迎え入れる事にかなりのプレッシャーもあり家族で検討した結果、オスは次回に見送ることにしました。

そんな思いをずっと抱きつつ、念願のオスのボーダーコリー“KOO”に出会ったのは、今から2年半前でした。“KOO”“ルイ”&“クリス”の交配で生まれた最後の子でした。一目見た時から、『これぞ私の求めるボーダーコリー!』と強く惹かれ、我が家の最高の「柱」的存在になることを感じさせられました。

とっても愛らしい顔付の優しい“KOO”ですが、男らしさや運動能力など力強さもしっかりと持っており、飼ってわかったのですが特にデイスク競技での運動能力は高く、体力を自足する能力や競技の直前および競技中をうまくコントロールできる能力もあり、かなり優れていると思いました。

また“アイル”についてですが、“さくら”が2歳を越えた頃から多頭飼いの実現を考えていた私たちは、さくらと仲良く楽しく暮らせる犬として、その“アイル”の両親の性格を確認して“アイル”を迎えいれました。私の予想通り、人や犬に対してとっても優しく、吠えることはほとんどなく、誰とでも仲良く遊べる性格的に申し分のない子です。家庭犬としての能力の高さも血統によることが大きい、ということを教えてくれた犬であり、“さくら”“KOO”とともに、私の自慢の大切な子供達です。



“さくら”の交配を断念したいきさつ

犬も人も「それぞれ」です。1頭、1頭それぞれの性格を持っていて、オス、メスの違い、得意なこと、好きなこと、嫌なことなど3頭は考えや思いが様々です。また、一番の違いは血統です。住む環境や生活スタイル、しつけ等は生活していくところで変化はありますが、血統は変える事はできません。そんなボーダーコリー達との生活をこれからも「どんどん」深めて行くつもりです。

ボーダーコリーは最初、かわいい犬という印象は持っていましたが、ボーダーコリーについては多少の知識しかありませんでした。そこで、飼い始めてみると、ボーダーコリーの能力にはびっくりすることばかりで、まずトイレやしつけを覚えていくスピードは完璧でした。そして、1歳のころからフリスビーやデイスクなどスポーツを少しずつ始めていきまして、本格的な大会デビューは2歳に近づくころからでした。

初めて我が家に来た“さくら”はフリスビーが大好きで2歳を過ぎたころから、家族と楽しく、大会に参加するようになりました。

その後、多くのお友達ができ、ある日“さくら”に「交配をしたらどうか?」という話が持ち上がりました。そんなことは今まで考えたこともなかったのですが、 「さくらの子ども達ってかわいいだろうな〜」なんてつくづく思うようになり、交配について興味を持ち始めたのです。ところが、血統書に基づいて調べていると“さくら”は股関節形成不全(HD)の血をひく犬だということがわかりました。そして、私自身で納得できるまで調べた結果、“さくら”の親戚犬達の血統でHDを発症している犬は少なくはなかったのです。このことを知った時は大変ショックで、“さくら”に子どもを生ませると高い確率で遺伝疾患を引き継ぐことが容易に予想出来ました。

また、私の知っている範囲では先天的なことをクリアしていても、飼い方や生活環境によって、後天的に発病することもあり、ボーダーコリーとその家族及び生活環境の関係も非常に大切なことだということが理解できました。

その後、“さくら”の遺伝疾患について気になりましたのでHDとCEA(Collie Eye Anomaly)の検査をした結果、2つとも発症しておりました。今のところ生活に支障はありませんが、軽度のHDを発症しておりますのでデイスク競技は引退しました。また、CEAについても発症しており“さくら”の場合、生活上問題はないという程度でありましたが、こんなことで「交配はできない」と判断し諦めることにしました。私はこれまで“さくら”の事があまりにもかわいくて、賢く、性格も良いのでいつの日か“さくら”の子どもを「見てみたい」と熱く思っておりましたが、多くの友だちや臨床獣医師および研究獣医師の関係者より学びまして、“さくら”の子孫を残すことは断念しました。


皆さんに知っていて欲しい事

「だれもが自分の犬がかわいく、この犬の子供を見てみたい!」という思いを持つ人も多いはずです(もちろん安易な交配はいけないことです)。それを遺伝疾患により断念しなければいけない、ということはとても残念なことです。私もそのひとりになります。データーや実績上で血統の良い犬であっても、「検査をしたから絶対に良い」ということはありません。命あるものすべてについて言えることですが、100%完璧なものはないと思っています。少なくとも飼い主として、自分の犬をよく知り、良いところ、そうでない所などを十分把握した上で交配をおこなうことが大切なことだと思っています。

股関節形成不全は多因子性の遺伝性疾患です。特定していくことは非常に難しいですが、羅患犬の血統書をより多く調べていくことで、注意しなければいけない血統が見えてくると私は考えています(これまで多くの友達の協力により、たくさんのデーターを収集することができました。皆様には本当に感謝しています)。

CEACLと同じように単因子性の遺伝性疾患です。両親がキャリアとなります。オーストラリア・ニュージーランド・ヨーロッパ・アメリカではCEAをなくしていこうという動きが以前よりあります。私もCEAのことをもっと勉強していきたいと思っています。

“さくら”は私たち家族の大切な犬です。彼女と一緒に遊べる遊びを考え、これからもたくさんの楽しい思い出を創っていこうと考えています。

我が家にボーダーコリーを伝えてくれた初めてのボーダーコリー“さくら”は、現在も家庭犬(2002年CDT取得・2003年CDU取得)として立派に生活しております。


我が家のボーダーコリーの健康について

ボーダーコリー“さくら”の為にも、私は数年前よりボーダーコリーとの生活をなるべく長く続けたい、ボーダーコリーと関っていきたいと思うようになりました。

そうした私たちの夢をいつまでも繋いでいってくれそうなのが“KOO”“アイル”です。この2頭のボーダーコリーの交配を、昨年より考えていました。というのもこの両犬の性格のよさと容姿のきれいさ、そして家族に対する愛情と遊び好き、これらは私や私の家族にとって、とても魅力的なものだからです。

以前に、“KOO”“アイル”の股関節と目の検査をしましたところ、ともに正常という診断でした。また、私の調べたところでは“KOO”の両親犬は股関節の検査を受けており正常ということです。“アイル”の父犬はニュージーランド、オーストラリアで目と股関節の検査をうけクリア証明書を持っています。母犬もオーストラリアで目の検査を受けクリア証明書を持っていると聞いています。また、この両犬の5代祖の血統書のなかには公開されているCLキャリア犬はいません。

この両親犬4頭とは、私は何度も遊び、その性格のよさ、犬の育てられ方が良好であることを確認しています。

“KOO”の両親と“アイル”の父犬はルイパパの所にいます。私たちがいつ遊びに行っても、いつも目を輝かせ、楽しそうにしています。


“KOO”“アイル”の交配 これからのボーダーライフ

以上のようにして、私のできる範囲で検査をし、血統を調べました。もちろん、「純血種であるこの2頭の交配により生まれる犬たちから、絶対に遺伝性疾患が出ない、ということは言い切れない。」ということは分かっていますが、それ以上にこの2頭の交配により生まれる子犬たちに「会いたい」という思いが強かったのです。

それで、“アイル”2歳になるころには、と考えていましたことが、今回実現したことになります。“KOO”“アイル”は理想的な自然交配でした。初めての交配ですので家族で感動しました。これまで交配を経験された方の話では、特に初めての交配はメス犬をしっかり押さえておくことが必要だということなどを聞いておりましたが、普段から生活を共にしてお互いの信頼関係ができていることから“KOO”“アイル”は安心感のある交配となったようです。

生命あるものの誕生なので、もちろん不安もありますが、健康で、両親犬の性格を引き継ぐ犬が生まれることを願います。

最後に私の夢は、家に帰るとボーダーコリー達がどの部屋の窓からも顔をのぞかせていて、わたしの帰りを喜んでくれるのが夢です。こうなると新たに家を建て替えしないといけないでしょうね!(*^-^*)

新しい命が生まれる7月がとても待ち遠しく、楽しみです。
        



さくらの父より 2005年6月21日